ブラウザフィンガープリント:サイトが読み取る情報と対策
ブラウザフィンガープリントとは何か、画面・言語・タイムゾーン・Canvas・WebGLの情報からブラウザが識別される仕組みを解説。VPNで変わらない理由と、効果のある設定も紹介します。
ブラウザフィンガープリントとは
Webサイトは、ページを正しく表示するために、開いたブラウザに関するいくつかの情報を読み取れます。ブラウザのバージョン、ウィンドウと画面のサイズ、優先する言語、タイムゾーン、グラフィックスアクセラレーションを使えるかどうか、などです。1つの情報だけなら何百万人にも共通しています。しかし多くを組み合わせると、ブラウザを少数のグループに、場合によっては1台の端末にまで絞り込めます。
Cookieと違い、フィンガープリントは端末に保存されないため、サイトデータを消去しても消えません。アクセスのたびに計算し直され、ブラウザの更新、新しいモニターの接続、設定の変更によって変わります。そのため、トラッキング企業はほかの手掛かりと組み合わせて利用しています。
サイトが許可なく読み取れる情報
IPNixaのブラウザテストは、どのページでも読み取れるのと同じ種類の値を読み取ります。次の表に、主な項目と、人によって値が異なる理由をまとめました。
| 要素 | 例 | ブラウザごとに異なる理由 |
|---|---|---|
| ユーザーエージェントとClient Hints | ブラウザ名、メジャーバージョン、プラットフォーム | ブラウザ、バージョン、OSの組み合わせ |
| 画面とピクセル比 | 1920 × 1080、1.5倍 | ディスプレイの機種と表示倍率の設定 |
| 言語 | en-US, ko | ユーザーが選んだ順序と組み合わせ |
| タイムゾーン | Asia/Bangkok | 端末の時計の設定(VPNでは変わりません) |
| CPUコア数 | 8、12、22 | プロセッサーの型番 |
| Canvasの描画 | テスト画像のピクセル | フォント、アンチエイリアス、グラフィックスドライバー |
| WebGLレンダラー | グラフィックスチップとドライバーの名前 | グラフィックスハードウェアとドライバーのバージョン |
観測例
2026年11月2日、バンコクにあるWindows 11のノートPCで、Chromium系ブラウザを使ってブラウザテストと同じ読み取りを実行しました。いくつかの結果から、ブラウザがすでに詳細を制限している点と、まだ漏らしている点が分かります。
- システムはWindows 11なのに、ユーザーエージェントには Windows NT 10.0 と表示されました。ChromiumはユーザーエージェントのOSバージョンを固定しており、正確なバージョンはサイトが要求した場合にClient Hints経由でのみ取得できます。
- WebGLの基本的なレンダラー名は汎用的な値「WebKit WebGL」でしたが、Chromium系ブラウザが現在も公開しているデバッグ用の拡張機能からは、内蔵グラフィックスの正確な型番とDirect3D 11ドライバーが返されました。
- 同じテスト画像をCanvasで2回描画したところ、ピクセルは完全に一致しました。つまり結果は安定しており、読み取ることができました。ランダムなノイズを加えるブラウザであれば、2つのサンプルは異なると報告されます。
- タイムゾーンは Asia/Bangkok、言語は英語(米国)、韓国語の順で、ブラウザは論理CPUコア数22、ピクセル比1.5を報告しました。いずれも、他国のVPNに接続しても変わりません。
VPNでフィンガープリントが変わらない理由
VPNは、Webサイトから見えるアドレスをVPNサーバーのアドレスに置き換えます。一方、ブラウザ自体が報告する情報は、ページが届いた後に端末上で読み取られるため、何も変わりません。ドイツのサーバーに接続しているのに、時計が Asia/Bangkok で第一言語が韓国語であれば、サイトはその食い違いに気づけます。それで身元が分かるわけではありませんが、不正検知やVPN検出の仕組みからは、通常と異なる接続に見えることがあります。
VPNアプリの中には、タイムゾーンを変更したりWebRTCをブロックしたりするブラウザ拡張機能を備えたものもあります。効果があるのはそのブラウザの中だけで、対象となる値に限られます。
実際に効果がある対策
有効な方法は2つあります。すべてのブラウザが同じ値を報告するようにするか、サイトやセッションごとに値を少しずつ変えるかです。特定の値を1つだけブロックすると、かえって逆効果になることがよくあります。その値をブロックしている人が少ないからです。
- Tor Browserは、すべての利用者が同じに見えるようにします。ウィンドウサイズを段階的にそろえ、タイムゾーンやフォントも共通にします。最も強力な選択肢ですが、使い勝手の制約も最も大きくなります。
- Braveは標準で、Canvas、WebGL、オーディオの出力をサイトごと・セッションごとにランダム化します。そのため、あるサイトで取得されたフィンガープリントは、別のサイトのものと一致しません。
- Safariは「高度なトラッキングおよびフィンガープリント保護」により、Canvasなど一部の読み取り値にノイズを加えます。この機能はプライベートブラウズでは標準で有効で、すべてのブラウズに適用することもできます。
- Firefoxは、プライベートウィンドウと、強化型トラッキング防止機能の「厳格」設定でフィンガープリント対策を適用します。さらに厳しい耐フィンガープリントモード(resist fingerprinting)も用意されており、Tor Browserはこれを土台にしています。
- 拡張機能は最小限にとどめます。拡張機能はそれぞれページから見える内容を変える可能性があり、珍しい組み合わせほど識別されやすくなります。
- ブラウザを最新の状態に保ちます。固定されたユーザーエージェントの例のように、新しいバージョンほど標準で公開する詳細が少なくなります。
設定は1つずつ変えて試す
1回の結果だけでは、自分のブラウザがどれだけ固有かは分かりません。表示される項目の数は、追跡されやすさのスコアではありません。テストで確実に分かるのは、ある設定によってサイトが読み取る値が変わるかどうかです。
- IPNixaのブラウザテストを開き、CanvasとWebGLを含めるオプションを選んで実行します。
- 結果を比較用に保存します。保存先はこのタブのセッションストレージだけで、最長30分保持されます。Canvasのピクセル、ハッシュ、フィンガープリントIDは保存しません。
- 変更は1つだけにします。ブラウザの保護機能を有効にする、保護機能をオンにしたプライベートウィンドウに切り替える、VPNに接続する、のいずれかです。
- タブに戻ってもう一度テストを実行し、変わった項目、変わらなかった項目、未確認の項目を確認します。値が表示されなくなっても、保護されている証拠にはなりません。実行するたびに値が変わる場合は、ランダム化されています。
よくある質問
ブラウザフィンガープリントは合法ですか?
地域と利用目的によって異なります。不正防止やセキュリティの分野では広く使われています。EUや英国のプライバシー規制当局は、追跡や広告を目的としたフィンガープリントをCookieと同様に扱っており、一般に同意が必要です。このガイドは一般的な情報であり、法的助言ではありません。
シークレットモードやプライベートブラウズでフィンガープリントは防げますか?
プライベートウィンドウはCookieや履歴がない状態で始まりますが、ハードウェアや設定の大部分は変わりません。SafariとFirefoxはプライベートウィンドウにフィンガープリント対策を追加しますが、Chromeのシークレットモードではこれらの読み取り値は変わりません。
IPNixaのテストは、フィンガープリントをIPNixaに送信しますか?
いいえ。値はブラウザ内で読み取って比較し、当社のサーバーには送信しません。任意の比較用データは、このタブに最長30分だけ保持されます。
ブラウザを更新すると結果が変わるのはなぜですか?
バージョン番号、使える機能、グラフィックスドライバーは更新によって変わります。これは正常なことで、フィンガープリントが単独ではなく、ほかの手掛かりと組み合わせて使われる理由の1つでもあります。